
■シリーズ
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二度目の歌が終わった途端、静寂に包まれると同時に一人が顔を上げ、私の方を見ました。
それは満面の笑みを浮かべた先輩でした。
さっきまではあまりの恐怖で気付きませんでしたが、よく見ると先輩の父もそこにいました。
ただ一人、私を見上げ微笑んでいる先輩に、私は何の反応も示せませんでした。
しばらくそのままでいると、突然そっぽを向き、どこかへ歩いていってしまいました。
すると、周りの人達も一斉に動きだし、ぞろぞろと先輩の後へ続いていきました。
終わったんだ…
私はガクンとその場に座り込み、茫然としていました。
早く叔母さんのとこに戻りたい、でも体が動かない。
頭がぼーっとなり、意識を失いそうにフラフラとしていたところで、叔母さんが2階に上がってきてくれたのです。
「終わったね。怖かったでしょう。よく耐えたね。もう大丈夫よ。もう大丈夫。」
そう言いながら叔母さんに抱き締められ、私はせきをきったように泣きだしてしまいました。
何を思えばいいのか、本当に分かりませんでした。
少しして落ち着いた私は、叔母さんに抱えられながら居間に戻りました。
時間はもう2時を過ぎていました。
時間を確認すると
「〇〇ちゃん、ホッとしている時間はないの。あの子やあの子のお父さんは今日はもうここには戻ってこないけど、さっきのはもう一度行われるわ。」
「…えっ…?」
「今度は3時に。歌の内容もさっきとは少し違うものになるの。ここでぐずぐずしていると、またあの子達が水溜まりに集まってくるわ。そうしたらもう取り返しがつかなくなる。」
「そんな、どうしたらいいんですか?私はどうしたら」
「落ち着いて。今から私の家に行くわ。この町を出て少し行ったとこにあるから。でも、あなたが持ってきたものとかは諦めてちょうだい。持ち帰るとかえって危険だからね。詳しい話はそれからにしましょう。さぁ、すぐ行くわよ。」
言われるままに私と叔母さんは家を飛び出し、そこから少し離れた空き地にとめられていた叔母さんの車に乗り込み、その町を後にしました。
どこを走っても同じ景色に見え、迷路から抜け出そうとしているような気分でした。
1時間ぐらい走るとようやく叔母さんの家に着きました。
中に入り、ある部屋に案内されたのですが、その部屋の中を見て再び恐怖が全身に広がりました。
卓袱台しかないその部屋の壁一面、天井にまでお札がびっしりと貼られていたのです。
異常としか思えませんでした。
もしかして、私は騙されているのでは…
叔母さんも何かとんでもない事に加担している一人?
そんな考えが頭をよぎりました。
次々と意味の分からない状況が続き、自分以外の者に対して不信感が募っていたのかも知れません。
そんな私の心を見透かすように、叔母さんは言いました。
「いろいろと思うことはあるでしょうし、恐怖もあるでしょうけど、この部屋でなきゃ話は出来ないのよ。ごめんね。我慢してね。」叔母さんは私をゆっくりと卓袱台の前に座らせ、自分は真向いに座りました。
そして、話してくれました。
ここからは叔母さんの話を中心に書きます。ほぼ、そのままです。
「何から話せばいいのかしらね…〇〇ちゃんはそもそもあの子から何て聞いて、どうしてあの町へ来たの?」
「毎年おもしろい行事があるから、見に来ないかって誘われたんです。町の中から一人が選ばれて、その人のために行われるものだって聞きました。それで今年はお母さんが選ばれた…って。」
「期間は三日間で、今日は二日目っていうのは聞いた?初日から来れないかって誘われなかった?」
「聞きました。初日から見せてあげたいからそうしようかっていう話もあったんですけど、私が断ったんです。あまりお世話になるのも悪いと思ったので…」
「そっか。あの子があなたに言ったことは全部そのままね。あれは毎年選ばれた人のために行われるもので、今年はあの子の母親が選ばれた。一日目から見せたいと言ったのは、特別な意味があったから。」
「どういう事ですか?」
「〇〇ちゃん、今日一度でもあの子の母親の姿見た?見てないわよね?それどころか、どこで何をしてるのかもあの子は具体的に話さなかったでしょう?当たり前なのよ。あの子の母親、つまり私の妹だけど、死んでるんだから。何年も前にね。」
「…えっ?…」
「あの子が学生の頃だったから、もうずいぶん前よ。だから、あなたが話を聞いた時も最初からあの子の母親はいなかったって事。」
「そんな、だって…それじゃ選ばれたっていうのは何なんですか?さっきの事は何なんですか?」
「あれは死人を生き返らせるためのもの。選ばれたというのは、生き返るチャンスを得たという事なの。毎年、死んだ人間の中から一人がそのチャンスを得られる。ただし、それを家族が望んでいなければダメ。望む場合は庭とかに大きな穴を掘って、その意志を示すの。」
「選ばれた場合、知らない間に穴に水が溜まっていって、大きな水溜まりが出来るの。これは1月2日から12月1までの間、時間をかけて起こるわ。それによって選ばれた者の家族は29〜31日(30〜1日)の三日間、さっきのあれを行う。そして1月2日から水がなくなり、また時間をかけて別の人が選ばれるのよ。」
「さっき、歌を聞いたわよね?最後まで聞いたわよね?どんな内容だったか言ってみてくれる?」
前述の歌詞を叔母さんに伝えました。
叔母さんの話ではこうなるそうです。
かえれぬ子はどこか
かえれぬ子は池の中
かえれぬ子はだれか
かえれぬ子は〇〇〇
(選ばれた死人の名前)
かえるの子はどこか
かえるの子は池の外
かえるの子はだれか
かえるの子は〇〇〇
(犠牲にする者の名前)
かえれぬ子はどうしてる
かえれぬ子は泣いている
かえるの子はどうしてる
かえるの子は鳴いている
「選ばれた死人を生き返らせるには、犠牲とする誰かに三日間歌を聞かせなきゃいけない。あの子が初日から見せたいと言ったのはそのためよ。歌は1時から2時、3時から4時の間でそれぞれ内容が変わり、各2回ずつ歌われる。三日間で6つの内容の歌が計12回歌われるというわけ。さっきあなたが聞いたのは3つ目の歌ね。」
「6つ目12回目の最後の歌を聞かせた後、その人をあの水溜まりに突き落とすの。はい上がってくるのはその人ではなく、選ばれた死人。犠牲になった者は二度と帰ってこないわ。そうやって、生きていた誰かの代わりに死んだ誰かが戻ってくるのよ。」
「といっても、今の人達は弔いのつもりで形だけ行う事がほとんど。ここ何年かで本当に生き返らせようとしたのは今回だけ。というより、あの子だけといった方が正しいかもね。あの子は母親に固執してる。何年経っても断ち切れないでいるの。」
「母親が選ばれたと分かった時から、あなたの話が出てたわ。どうしてあなたにしたのかは分からないけど、あの子はあなたを犠牲にして母親を生き返らせるつもりだった。本来なら、二日目に来たという時点でこれは成立しないはずだったのよ。三日間のどれが欠けてもダメだからね。でも、雨が降ったのがいけなかったわね。」
「歌も含め、これらの事はかえるのうたって呼ばれてるわ。元は昔から祀られている何かに関係するものなの。死人を生き返らせるなんてぐらいだから、霊とかそんな次元じゃないのかもね。その何かは雨を好むって伝えられてる。三日間のうち、一日でも雨が降っている中でかえるのうたを行うと…」
(ここだけはぐらかしてました。)
「とにかく昨日雨が降った事で、あなたが一日目にいなかったというのは意味を成さなくなったの。本当なら、事が済んだ三日目に現われるはずのあの子の母親が、昨日の時点であの水溜まりにいたからね。あなたが最初に見た時も、さっきの歌の時も、水溜まりからじっとあなたを見つめていたのよ。お母さんが準備してるっていうのは、そういう意味だったの。」
「たぶん、これからもあの子は諦めないわね。またいつか選ばれるのを待ち続ける。だから、あの家の水溜まりの穴が無くなる事はないでしょうね。」
ここでかえるのうたの話は終わりました。
話を聞いた事である疑問が浮かびましたが、聞けませんでした。
もしそうだったら…正気でいられないかもしれない。
そう思ったからです。
この夜は叔母さんの家に泊めてもらい、朝になって私の家まで送ってもらいました。
別れる際、叔母さんに言われました。
「明日から新年だけど、その一年間は雨に濡れないようにしなさい。雨の日は外出自体控えたほうがいいわ。生活は大変になるでしょうけど、必ず守ってね。その一年を過ぎれば、もう大丈夫だから。もし、どうしても何か心配な事があったら、私のところにおいで。怖い思いさせて本当にごめんね。元気でね。」
休みが明けた後、しばらく先輩は会社に出てきませんでした。
「お母さんが亡くなった」と連絡してきたそうです。
私はその年に会社を辞めました。
叔母さんに忠告されたとおり、雨の日には一切外に出なかったので、続けられなかったんです。
突然雨が降るかもわからないので、その一年間は実家で引きこもりでした。
なお、私が辞めるのと入れ違いで先輩は復帰なされて、今もその会社に勤めています。
とても会う気にはなれませんでした。
今、私は普通に暮らしてます。
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怖い話投稿 >> 本当にあった怖い話 >> かえるのうた 後
■変なおじさん→VerryGood! 2010/07/25 11:31
面白かった!
でも叔母さんが選ばれたってどう言うことな …(続き)
■匿名さん→VerryGood! 2010/07/24 08:33
いい
■匿名さん→VerryGood! 2010/07/14 10:08
ゲロゲロ
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