
しばらくの沈黙…
Bが口を開いた。
「A。お前、まだアレを見てねぇよな。」
「アレって何だ?」
「俺達を殴ってここに引きずってきた奴だよ…」
「奴?生きた人間が居たのか?」
「わからない…」
Bは再び口を閉じた。
それにしても…
さっきから聴こえてくるこの金属を擦るような音は何だ?
それに、ここは…何処なんだ?
俺達の目の前には無機質な白い壁と窓から僅かに入ってくる月の明かりに照らし出された気味の悪い人形が映っている。
6畳程の洋室。ここは、まだあの団地の中らしい。
と、金属を擦るような音がピタリと止まった。
次の瞬間、部屋のガラス戸に人影が映る。
Bの顔が青ざめていく…
人影が大きく振りかぶった。片手に何か持っているようだ…
ガシャンッ…
……?ガラスが割れる音がしない、が、透明なガラス片が床に落ちている。
奴は姿を現した。
片手に長斧を、もう片方の手には鎖で縛った冷蔵庫。さっき共同通路で聞いた何か金属を引きずっているような音…
それが奴の持っている長斧のものだったとすぐに察知した。
冷蔵庫?何であんなものを引き回しているんだ?
「A!!逃げるぞ!!」
Bがいきなり叫んだ。
その声で状況を理解し、ここに居るのはマズイと悟った。
奴が再び振りかぶった斧を降り下ろした。
「ぐぁあ!」
体に激痛が走った。
右足の太もも辺りに浅いが切り傷が口を開ける。
「ガラスは割れねぇくせに、人は切れるのかよ!?」
「A!んな突っ込み入れてる暇があったら走れ!
逃げるぞ!!早く!!」
俺達は、奴の横をすり抜けて共同通路へ飛び出すと、突き当たりにあった非常階段の扉へ一直線…
奴も続いて来た。
どうでもいいが、かなりの俊足だ。
「何だよ!?あれ!?何なんだよ…!?」
「知るかよ!んな事よりもこの状況をなんとかすんのが先だろっ!!」
内設された非常階段を駆け降りながら、Bが俺に言った。
アレを振り切る為に、非常階段を逸れ、薄暗い月の明かりに照らし出された廊下を必死に走る。
追いかけてくるガラガラ音がいつの間にかガガガガという連続音になっている。
俺とBは、それ位必死になって走った。
だが、ここで俺は大事なことに気付く。
この建物には出口が無いのだ。ありとあらゆる窓や出入口には鉄柵が張り巡らされているのだから…
「おぃ、B!駄目だ、下に向かっても行き止まりだ!逃げ道がない!!」
「じゃあどうすんだ!?
屋上に行って流れ星にでもなって逃げるのか!?」
「それになってる時点でもう死人じゃないのか?」
「じゃあ何か上手い言い回し考えろよ!」
「怒る場所間違ってるぞ…」
「よし、ならこうしよう。2人バラバラに逃げるんだ。そうすりゃ奴はどっちを追えばいいのか迷って立ち止まる!」
「なるほど、時間稼ぎにはなりそうだな。
それで、別れた後は、どこで合流する?」
「最上階だ。そこの共同通路の中央で合流だ!」
「わかった。
………俺はもう一度非常階段に行く。お前はこのまま上まで行け。」
Bは深く頷き、走る速度を速めた。
俺は180°方向転換、奴の方へ向かって走り、奴の横を巧くすり抜けた。
さぁ、付いてこい。
当然、距離が近い俺に奴は付いてくると思っていた。
しかし…
「なんでだっ〜〜〜!!」
意外にも奴は離れたBの方を追った。
よほど足の速さに自信があるらしい…
頑張れ、B。
薄暗い非常階段を必死になって上った。
Bは大丈夫だろうか?
あの状況下でBはきっと脱出の方法を何かひらめいたに違いない。
さすがだぜ、B。
そんな期待に胸膨らませ、最上階の扉を開く。
まだBは来ていないようだ。
とりあえず、Bの指示通りに共同通路の中央へ…と、
「うぉぉおおっ!!!!」
けたたましい雄叫びと共にBが登場した。Bの後方には冷蔵庫をブン回しながら怒り狂ったように走る奴がいた。
「B!!ここからどうするんだ!?」
「はぁ!?知らねぇよ!!
んなこと自分で考えろっ!」
…全く頼りにならない男B。
共同通路の中央で合流した俺達は、再び2人仲良く猛ダッシュ。
「やべ、これじゃ結局さっきと一緒じゃねえか!!」
「当たり前だろ!?何も進展してねぇよ!!」
「…っかしーな。大体こういう時は建物の屋上に行けば何か武器が落ちてるもんなんだけどな…」
「B!お前もう喋んな!!」
結局、非常階段を駆け降りる。次第に体力が限界に近付いてきた。
息も切れ切れに、何とか脱出する方法はないものかと考えた。
……と、薄暗い非常階段の角に設置されたあるものに目が止まった。
「おぃ、何してんだA!!
奴に追い付かれるぞ!!」
「……これだ。」
「何だよ!?ただの箱だろ、それ!」
「ダストシュートだよ。
これで外に出られる!」
俺は、まだ状況が理解できていないBの腕を掴むと、勢いよくダストシュートに飛び込んだ…
「イテテテッ!
A、なんだこれ!?真っ暗でしかも痛てぇよ!!」
「少し我慢しろ!」
……………
ダストシュートの排出口から出る俺達。
どうやらここは黙地の裏手にあるごみ捨て場の様だ。
幸い、切り傷や擦り傷程度で済んだ。
Bも元気なようだ。
「よかった。何とか逃げ切れたな。」
「さすがだぜA、まさかあの状況でこんな逃げ方に気が付くなんて。」
「ありがとな。よし、とりあえず帰ろうぜ。
もう夜も明けちまう。」
「…しかし、アレは何だったんだろうな?」
「さぁな。だけどヤバイものだってのは確かだ。」
「だな。けどお前、気付いてなかったみたいだけど、あの団地の中にまだ住んでる人等居るっぽかったぞ。」
「はぁ?」
「いや、俺等が逃げ回ってる間にいくつか部屋の前通ったろ?あの時さ、部屋のドア開けて俺達を匿おうとしてる人等が居たんだよ。」
「それって…
いいや、何でもない。」
「あの人等もスゲエよな。あんな奴が居るのにあそこに住んでるなんて…」
俺はこんな楽観的な答えが出せるBの方が凄いと思った。
すっかり朝日も昇りきり、辺りがじわじわと蒸し暑くなり始める。
俺達は、泥と錆びにまみれた洋服で2人仲良く帰路に着いた。
…当時、Wが殺害したとされる団地の住民は8人。
しかし、あの団地内には他にも数名の行方不明者がいたという…
きっとBが見た人達は…
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怖い話投稿 >> 都市伝説の怖い話 >> The kill 2
■匿名さん 2010/08/13 04:39
なんでロスがいないんだよってフィービーが怒ってる
■匿名さん→Good! 2010/07/24 18:01
ざっと読んだだけだけど。サイヒルみたいだな。
■☆☆☆さん→VerryGood! 2010/07/19 06:13
スピード感,臨場感,それから笑い?の独特のかき方が・・・う~ …(続き)
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